イベントレポート 「山田姉妹 ソプラノデュオコンサート in 逗子2022」2022年3月5日(土)開催

ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします

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 空が青くて気持ちの良い日和。だが、世の中の状況は厳しい。暗く厚い雲が垂れ込めているかのように。逗子文化プラザホールに入ると、検温、手・指の消毒、ソーシャルディスタンス。皆、あちこちに気を遣い、少々神経質になっている。双子のソプラノデュオ、山田姉妹は、そんな観客に何を与えてくれるのか。
 プログラムが素晴らしい。この暗い時代に明かりを灯すような曲目が並んでいる。姉、華氏と妹、麗氏は同じソプラノだが、声質は違う。それが魅力あるハーモニーを生み出す源となっている。《いのちの歌》(作詞:Miyabi/作曲:村松崇継)は、当たり前に思える日常が、どれほど幸せな時間であるかを描いた作品。人生と命に感謝を捧げる歌詞を、姉妹は1語1語大切に歌う。ことばが持つ意味を説得力を持って伝えてくれた。ユーミン(荒井由実)の《やさしさに包まれたなら》は、タイトル通り、心を癒す優しさに溢れ、《2つで1つ》(作詞・作曲:工藤慎太郎)は明日、そして未来への希望の歌。この曲はスタンドマイクが使われ、2人が手話で歌詞を伝えながら歌った。コンサートの所々に細やかな心配りを感じる。《この街で》(作詞:新井満/作曲:新井満・三宮麻由子)は、生まれ育ち、今も暮らす街に人生を重ねた、ささやかな幸せがこもった作品。聞いていたら、なぜか、世界で起こっている混乱が思い浮かんだ。取り戻したいもの・・・それが詰まっているような歌詞だった。澄んだソプラノで丁寧に詩を伝える2人。それが、1部で歌われた曲のメッセージを一層引き立てていた。
 2部は歌曲やオペラ。トスティの《薔薇》、プッチーニのオペラ《ジャンニ・スキッキ》より“私のお父さん”、ドヴォルザークのオペラ《ルサルカ》より“白銀の月よ”ほか。彼女たちの歌声は優しく柔らかで心地好く耳に入ってくる。古今東西、数多くの歌姫たちが長く歌い継いできた名曲に挑んだ2人。これからも、共に努力を重ね、成長していくことだろう。先の未来が楽しみである。全体を通して、内門卓也氏のピアノ伴奏も美しい音色と確かなテクニックでしっかりと2人を支えていた。
 アンコール1曲目は《アヴェ・マリア》(G・カッチーニ)。観客の多くが、世界を思って静かに祈りを捧げたに違いない。ラストはミュージカル《マイ・フェア・レディ》より“踊り明かそう”で華やかに。また再び、1晩中でも踊り明かせる日が来ることを願って!

ボランティアライター 青栁有美

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