ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします。
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タイトルの【らせん】に込められているのは映像の歴史。それは、社会や他の芸術に影響を与えながら、真っ直ぐではなく、螺旋状に拡がってきたそうだ。
どのような展示なのかをイメージできないまま出かけたのだが、かなり楽しかった。遅ればせながら、メディアアートに親しみを持った。会場の暗さに目を慣らしながら、入り口付近の作品をみていると、ディレクターさんが解説して下さった。
《A shore A.M./P.M.》は、2Lサイズほどの風景作品が8枚、横一列に並ぶ連作だ。どれも逗子葉山の海を陸から眺めている構図で、揃った水平線が作品をまとめている。穏やかな動きのアニメーションで、昼間にそよぐ風や夜の揺れる灯りの様子など、優しい変化をいつまでも見ていたくなる。今後4作が加わり最終的には12枚になるそうだ。
《関ヶ原山水図屏風》も見所満載の映像。ホールの舞台奥の壁一面に合戦の様子を描いた図屏風が投影され、大勢の侍が歩いたり馬に乗ったりしている。ひとりの侍を目で追っていくと、移動ルートに法則性があるようだ。いろいろ追っていくと、ある侍は雲海に紛れ、ある侍は刀に破れて線香花火の最後みたいに散り消えていった。
《ジャングルのゆりかご》も大きめの映像。木の上でうたた寝しているオセロット(豹柄の山猫)に近づくと、ぱっと目を開いて見つめてくる。もっと近づくと大きくあくび。起こさないようにどこまで近づけるか、ゲーム感覚で遊んでみた。
《Video Meditation-Spiral Dance》は、映像の前に立って手を動かすと、その動きが映像に反映される作品だ。スノードームの中に入って細かいきらきらをかき回しているような感じでもあれば、銀河系に向かって魔法をかけ、星屑を操っているような感じでもある。
《Relief》の作者と8ミリフィルムの出会いは学部生時代とのこと。映像からフィルムの回転が伝わってきて、えも言われぬレトロ感。フィルムに直接彫る制作方法が興味深い。
どの作品も来場者を隔てず、作品の放つ光に取り込んでくる。対峙して鑑賞するというより、同じ空間を体験するようだった。会場を見渡せば、来場者のシルエットまでもが作品みたいに溶け込んでいた。
ギャラリーで同日開催のワークショップは、映像祭にちなんだ、2コマアニメのおもちゃを作る≪おもしろ工作アニメ~マジックンロールを作ろう!~≫というものだ。2コマでできるの?と思ったが、見本の鳥の作品を見せていただくと、ちゃんと羽をパタパタさせていた。夏休みの自由研究によさそうな工作だ。
リストバンド式のチケットがテーマパークみたいで、手首に巻いたまま楽しい気分を持ち帰った。
ボランティアライター 深谷 香
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明るいところから暗闇に入るのが好きだ。映画館、押し入れの中、頭までもぐりこむ布団。何か落ち着く…安らぎを感じるのです。12月4日(土)のお昼過ぎ、”メディアアートやアニメーションなど、こどもからおとなまで楽しめる2日間、らせん状にひろがる映像の世界を体感しよう!”と書かれたチラシを手に、さざなみホールに足を踏み入れた時も、暗闇に包まれた途端、妙な心地よさを感じたのでした。照明を消し、環境音楽が静かに流れる中、イスを取り除いたホールの壁に、5つの映像の展示がありました。
1つ目は「ジャングルのゆりかご」(上平晃代 作)。アニメーション。ジャングルの中で、チーターのような猫、オセロットがすやすや眠ってます。床の矢印に従って前に近づくと、猫の目がパチッと開きました。赤外線のセンサーで感知するそうです。濃い原色の世界は、まわりの暗闇をより暗く塗りつぶして、自分がジャングルに紛れ込んだような錯覚を起こしました。
2つ目は「Relief」(よこえれいな 作)。8ミリフィルムの映像。人の顔と手が、2つの小さなスクリーンに映し出されます。単色。そして無声。いや、フィルムが回るカラカラという音が付きます。この音を聴くだけで、58歳の私の耳に、郷愁が押し寄せてきました。幼い頃、父が撮った家族の8ミリ映像を皆で観たあの日々が…。横で解説されていた作者は、若い女性でした。古い機械に愛情を持ってくれていて、とてもうれしくなりました。
3つ目は「Video Meditation-Spiral Dance」(円香/MADOKA・佐藤径亮 作)。壁のスクリーンには、細かい泡状の無数の物体が集まり、様々な形や色に変化しながら、生物のように動き回る、抽象アートの作品です。「作品の前に立って動くと、それに合わせて映像も動きますよ」と、作者の男性に説明していただきました。両手を上げてぐるぐる回してみる。影のように水泡もうねって動きます。とてもシュールで、心がザワつきました。
4つ目は「関ケ原山水図屏風」(重田佑介 作)。これは、壁の左右を目いっぱい使ったアニメーション。歴史の教科書にも載っている合戦絵巻ですが、何と、数百人以上の武士が動いて戦っているのです!感動とともに、何だか笑ってしまいました。槍を持った、アリみたいな武士全員が一生懸命戦っているのですから。
5つ目は「A shore A.M./P.M.」(重田佑介 作)。アニメーションの連作。ハガキ大の8つの画面に、逗子・葉山の実際にある海沿いの風景を、定点カメラで撮影した体で切り取った作品です。作者は4つ目のド迫力合戦アニメと同じ方です。若くて、とても純真そうな方でした。地元の方であればすぐにわかるあの場所をドット絵で再現…ただバスが通り過ぎるだけのシーンなのに、飽きずにずっと見てしまう、中毒性のある連作でした。
壁のスクリーンに、自分たちの影を映してはしゃぎまわる子どもたちの嬌声も、なぜか遠くの方からフィルターがかかって聴こえてくるような気がしました。ちょっと幻想的で、安らぎに満ちた暗闇の展覧会でした。
ボランティアライター 三浦俊哉
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