ホール主催の催しの感想や雰囲気をみなさまに発信する活動をしている“情報発信ボランティアライター”の方によるレポートをお届けいたします。
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和太鼓グループ彩-sai-との出会いは5年前。きっかけは、この情報発信ボランティアだった。あの頃、和太鼓の曲を1曲も知らなかったし、太鼓だけのコンサートがどんな感じなのか想像もつかなかった。しかし、コンサートが始まった瞬間から曲を知っているとか知らないとか、そんなことはどうでもよくなった。ホール全体が響きを閉じ込めた一つの箱のようだった。あれから5年、プログラムには知っている曲がいくつも並んでいる。
第一部では存分に“和太鼓彩”を聴かせてもらった。8曲の演奏であっという間に55分が経っていた。《アンゴスチュラ・ビターズ》での渡辺さんによる置き太鼓セット打ちが格好良かった。渡辺さんと言えばチャッパのイメージだったが、あっさりドラマーの印象になった。
第一部を締めくくったのは《海と空の交響祭》。太鼓と篠笛による多楽章形式の交響曲。情景が浮かぶ曲だった。ステージの奥のグレーの壁は曇り空の逗子海岸のようだ。目を閉じてみると海と空の境が灰色にまざって、大太鼓が地響きや風の唸りのようにきこえる。大自然に感じる畏怖(いふ)の念とでも言えばよいか、身体が動かないような怖さの後、空が晴れて凪(な)いだ沖にほっとするような気分になった。
第二部では、逗子開成高等学校和太鼓部が登場。“高校生の音色”、“和太鼓グループ彩 -sai- WiNGSの音色”、“和太鼓彩の音色”が生き生きと一つになっていた。それぞれのグループの良さを遠慮なく出し合った共演がとてもよかった。10代が加わった膨らみ具合がバランスよく効いていた。
太鼓が放射状に配置され、よりいっそう客席全体に響き渡る気がする。衣装替えもまめやかだ。“WiNGS”のなかに、つい見てしまうメンバーがいた。彼は「客席から自分の姿がどう見えるかを常に意識して研究」しているらしい、首尾よく術中に嵌まった。逗子開成高等学校和太鼓部の皆さんは気持ちよい緊張感のある真剣な演奏を披露してくれた。終演後にホワイエに並ぶ姿は高校生らしくて、その張弛(ちょうし)がまた素敵だった。
プログラム最後の曲は彩の演奏で《駆け抜ける空》。大太鼓の長いソロ打ちや篠笛のロングトーンに息を詰めた。アンコールで再びお祭り気分に盛り上がり終演となる。
今日は後方の座席だったので客席とステージが見渡せた。演目が進むにつれて観客の拍手する手が徐々に高くなっていった。はじめは胸元辺りで叩かれていた両手が、最後の方は頭上で叩かれた。この拍手がVol.7の開演に繋がるようで楽しくなる。
ボランティアライター 深谷香