★イベントレポート「和太鼓グループ彩-sai- 逗子公演」2019年10月5日(土)開催

当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。

 終わった途端に「もう一回みたい!」と思った。
 一週間ほど前、プラザの掲示板に“完売”とあって、当日は大入り。
 
プログラムに目を通すも、そもそも太鼓の楽曲を知らないので、一曲も分からない。曲ごとの記載はないが、彩のメンバーが多数作曲しているようだ。登場した彼らを見て思った。CMやチラシより、実物の方がかっこいい。最初から全力の演奏。始まって1分とたたないうちに、見ているこちらの腕が筋肉痛になりそうだ。How energetic! 曲を知らないとか、今、何曲目だとか、どうでもよくなった。ライブならではの体感。圧倒的な響震。
 
全員が美しく演奏する。静も動も、そのシルエットは、まるでダンサーだ。
 
使われた楽器は、太鼓(長胴太鼓、桶太鼓、締太鼓、大太鼓)のほか、横笛(篠笛、能管)、チャッパという手のひらサイズのシンバルのような金属楽器などだ。太鼓も笛も、和楽器を多才に操り、リズム一辺倒でないステージを繰り広げた。
 
逗子開成高校和太鼓部の部員さんたちから、若いパワーとよい刺激をもらったそうだ。高校生の演奏《Siesta》を讃えていた。互いの演奏をリスペクトし合う素敵な共演だった。
 
近くの席に小さな女の子がいて、ときどき素直な感想を口にしていた。「あのひと好き♡」(⇒渡辺隆寛さんのことで、3回くらい言っていた。)「こわい」(⇒《物の怪》)などなど。たしかに《物の怪》の演奏が、能管の独特な音階で始まったときは、照明も暗く、いとおどろおどろし。なんだか急に冷房が効いてきた。
 
衣装の素晴らしさにも触れたい。“和モダン”趣向で大胆な色使い。日本の伝統色っぽい彩りや、帯地のような柄は、360°スタイリッシュ。一見お揃いに見えるデザインも、身ごろの一部だけそれぞれに異なる意匠で凝っている。制作を担当するのは萩原泉さん。その萩原さんが大太鼓に向かうと抜群に格好良い。《奏》の演奏姿は最高だった。太鼓の響きも我々の手拍子も、一切合切がホールという箱の中で、壁という壁をふるわせていた。
 
アンコールまで駆け抜けた14曲。みんなで“スポーツ観戦”したような気持ちよさ。
 
終わった途端に「もう一回みたい!」と思うわけだ。
 
公演から一週間が経ち、きれいな夕焼けを期待して海に向かって歩いていると、逗子開成から太鼓の音が聞こえてきた。なんて素敵なリアル余韻。

ボランティアライター 深谷香

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 和太鼓と言えば、ピンと張り詰めた空気の中、筋肉標本のような男性が褌一丁で全身で大太鼓を打ち鳴らすイメージが強いが、本日の和太鼓グループ彩、ポスターを見る限り何やら様子が違う。さてどんなものか?照明の落とされた満席の会場で、心地良い緊張感とともに、開始を待つ。 
 パッと鮮やかな照明がつくとともに始まったのは『大海祭』。演者はアニメの中から抜け出してきたような色鮮やかな衣装をはためかせる若きイケメン集団。金髪もいる、アフリカの音楽家かと思うような人もいる。おもちゃ箱をひっくり返したような彼らがそれぞれに個性あるバチさばきを披露する。普通、太鼓はストイックなまでに外見の色を落として響きに集中させるように思っていたが、彩は違うのだ。それぞれが一糸乱れぬ統一というのではなく、まさしく彩(いろどり)豊かな演奏ぶりだ。シルク・ドゥ・ソレイユなど、視覚的な舞台を意識して構成している感じを受ける。
 
わっと盛り上がった会場に、リーダーの葛西氏が、サーカスの口上宜しくグループが桐蔭高校和太鼓部OBによって結成されたこと、本日は逗子開成高校との共演があることなどを語っていく。いろいろな太鼓の名称や、高校の和太鼓がそれほど盛んで県大会などがあることを初めて知った。
 
そしてこの逗子開成が凄かった。地元配慮で“入れてあげた”などと言うレベルではない。彼らが飛び込んでくる『祭宴』で、舞台の勢いががらりと変わった。演奏するのが嬉しくてたまらない学生のパワーが炸裂し、手練れのプロたちがそれに呼応して、まさしく「セッション」の醍醐味が会場全体を興奮の中にまき込んでいく。特に彩唯一の十代、吉田氏の呼応は素晴らしく、担ぎ桶太鼓のバチさばきは惚れ惚れするようだった。その後、彩のメンバーによる和太鼓のイメージを一新する演奏が続き、ジャズ?サムルノリ?などといろいろなところへ連想が広がる。
 
休憩明け後半、逗子開成の“Siesta”、これは葛西氏がMCで予告した通り、すごいの一言。和太鼓にハーモニカが入って、果ては『聖者の行進』。舞台の上を縦横無尽に躍動する高校生たちの見事な演奏に、立ち上がって拍手したくなった。
 
続いて彩が太鼓演奏の多様性を盛り込みプロのショーを披露。アンコールで逗子開成を交えて、まさに海岸花火のグランドフィナーレのようなエンディングを楽しませた。十代の演奏に瞠目し、進化する和太鼓の世界の魅力を堪能したひと時だった。 

ボランティアライター 不破理恵