当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。
皆さんは、逗子文化プラザって何をメインに利用してますか?図書館メインですか?それだけだと勿体ないですよ!先日なぎさホールで開催された「沖仁con木村大 情熱のギターコンサート」は、そう言いたくなる2020年一番の出来でした。
フラメンコギタリストの沖仁さん、クラシックギタリストの木村大さんは、ともに様々なメディアで取り上げられることの多い著名なギタリスト。その二人が共演するのだから一体どうなるんでしょう?
今日のコンサートは2部構成で1部は沖さん、木村さんそれぞれのソロコーナー、2部では二人が共演する構成です。
最初は沖さん、爪弾き始めただけで流れる時間の速さが変わります。ステージのライティング(舞台照明)は、異国の街角で聞いているような気にさせます。プレイヤーは沖さん一人なのに、何重にも響いてくるから不思議ですね。合間のMCでは、葉山に12年住んでいるとのこと。お隣さんであることも判明です。僕的には、クラシックメドレーが最高!フラメンコで「トルコ行進曲」を奏でるなんて脱帽でした。
バトンタッチされた木村さんも負けてはいません。一番響いたのはやっぱり、「戦場のメリークリスマス」。フラメンコ、クラシック、観客それぞれの好みはあっただろうけど、あいがけのカレーみたいでどっちもおいしくてたまらない余韻が残った1部でした。
2部開始です。二人のギター少年がやんちゃ丸出しで、入れ替わり立ち替わり即興演奏をし始めたもんだから、みんな釘付けです。
沖さんも言っていたのですが、もう「普通」のギタリストではないですよ(感動)。「やばい」ギタリストです。そうでなければ、どうしてヴィヴァルディの「四季」がフラメンコになったりなんかするんでしょう。佳境を迎えたステージは「アランフェス協奏曲」。最後はチックコリアの「スペイン」で終了し、観客総立ちで二人に拍手。それに応えて沖さんが即興演奏のアンコールで締めくくってくれました。
てんこ盛りのステージは、奏者・観客ともにやんちゃできた楽しい時間、会場を後にしても年配の先輩が家族に「ひさびさに痺れた」と電話をしていました。
実は、沖さんは3月に葉山を離れるとの事です。そうか、このコンサートは旅立ちのコンサートでもあったのですね。新しいステップにもぜひ期待したいものです。
ボランティアライター 河島 三二
*************************************************
スペインのフラメンコギターコンクールの優勝者沖仁と、クラシックの早熟の天才木村大が逗子に来る!ぎりぎりに入った会場はすでに満員御礼。客席の照明が落ちると、すーっと、沖氏がギターを持って現れ、椅子に腰かけた。あまりにさりげなく、大アーティスト登場という気負った空気がまるでない。が、彼の指がギターに触れたと思うと流れ出した細やかなトレモロの響きに、あっと息を飲み、そのまましばらく呼吸が止まった。何だこれは?ギター演奏は何度かコンサートで聞いている。フラメンコギターはパコ・デ・ルシアに始まり、大好きだ。だが沖氏は、そのどれとも違う。流れる水のようなトレモロに鋭く入るギターのボディを叩くゴルぺ。次々と繰り出されるフラメンコギターならではの技巧で「べサメ・ムーチョ」が奏でられる。舞台の上はギタリスト一人なのに明らかに踊り手と手拍子を打つ人の気配がある。でもそれだけではない。
この音は何か違うもの、深い瞑想に人を呼び込む-ああ、そうだ、水琴窟の音、鹿威しの竹の音だ、と思い至った。異国の民族音楽と対峙する葛藤を経て、沖氏が達したのは、まさしく日本ならではの音を極めたフラメンコギターなのではないかと感じた。「クラシック・メドレー」、ソロの最後は「グリママ(グラティーナ)~禁じられた遊び」だった。
そこで木村氏と交代。一音目から全く違う音、クラシックギターは、弦の音がしっかりと一つ一つ出てくる感じ、特に三本の太い弦の音が響く。映画のシーンが浮かぶような「コユンババ」、そして「戦場のメリークリスマス」は作品の良さを再確認させてくれるアレンジで、“作曲者は、こんな風に演奏してもらって嬉しいだろうな”、と思う。
休憩をはさんで二人のコラボで「さくらさくら」。伴奏楽器だったフラメンコギターの新境地を開いた沖氏のファンだ、という木村氏、小説アルケミストをモチーフに二人の演奏が点に重なる時を生み出したいと思って作ったという「レバンダール(アンダルシアから吹く風)」に続き、ヴィヴァルディ作曲の四季から「夏の嵐」。そしてクラシック界の旗手、木村氏への敬意を語る沖氏と二人、「アランフェス協奏曲」をギターのみで圧巻の演奏。最後は「スペイン」で、木村氏が、大好き!感に満ちてはじけ、年長の沖氏が上手く伴走してのセッション、会場はスタンディングオベーションの嵐となった。
鳴りやまぬ拍手に再登場した沖氏は、東日本大震災の時に作った「スーパームーン」を、12年暮らした逗子への別れの思いを込めて即興演奏してくれた。言葉を失うほど、今日は本当に、生きててよかった!
ボランティアライター 不破 理江