当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。
開演15分前には客席が8割方埋まっている。来場者を見渡すと50才代よりも年配の方が多く見受けられる。新型コロナウイルスの影響だろうか、マスクを着用している方も半数はいらっしゃる。
太鼓と竹笛のお囃子が会場に響きわたると緞帳が開き、逗子落語会が始まった。最初の落語は前座の金原亭乃ゝ香さんという女性の方である。細面でかわいらしい人である。落語の話は「転失気」という言葉を通じて、知ったかぶりをするとかえって自分自身が恥ずかしい思いになるという内容である (転失気とはおならの事である)。金原亭乃ゝ香さんの歯切れのいい口調でテンポもよく、来場者も大いに笑い、会場内も和んだ雰囲気となったのではないかと思う。
この後、すぐ柳家三三さんの登場である。湘南とは何かという持論の話、公演日の2月22日にまつわる話など「まくら」を10分ぐらい話し(まくらとは雑談話の事をいう)、来場者は大いに笑い、最初のつかみは抜群である。この落語噺はある留守の家に泥棒が入っていると、その家の夫婦が帰って来る。泥棒と鉢合わせとなり、家に入った泥棒なのだけれど、なぜか心通わせ良い関係になるという内容を身ぶり手振りでテンポもよく25分ぐらい話され会場内は笑いで包まれた。
15分間の仲入りとなってホワイエに出てみたら、会場内と正反対に静寂の時が流れていた。仲入り後、鏡味仙志郎さんの大神楽曲芸という傘を回しながら色んな物を回したり、五階茶碗といって顔の部分に色んな品物を載せていき、バランスを保ちながら積み上げる芸をしたりと、ハラハラドキドキという感じで会場内は緊張感あふれる雰囲気となった。
柳家花緑さんが高座に上がり、落語前「まくら」の“笑う事は良い事だ”という話を聞いているだけで、会場内は笑いの渦である。落語噺は道具屋の主人が古い太鼓をお殿様に高値で買ってもらうという内容を、おもしろ可笑しく話していた。とても分かり易く来場者もとてもいい笑顔だった。あっという間に終演となった。逗子落語会に来場された方々は皆さん満足感一杯で会場内を後にしたことだと思う。
ボランティアライター 佐々木 一弘
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令和2年2月22日(ネコの日)の午後2時からの落語二人会。2づくしで始まり、始まり。柳家花緑(かろく)師匠と柳家三三(さんざ)師匠の競演なんて、落語好きにはたまらない、今一番脂の乗った実力者の組み合わせです。
前座さんは、美しすぎる落語家でおなじみの金原亭乃ゝ香(ののか)さん。演目は「転失気(てんしき)」。“おなら”の噺です。ミスマッチな取り合わせで、思わずニヤニヤしてしまいました。ネコの日だけに。女性ならではの華やかな雰囲気につつまれて、会場が温まりました。
待ってましたの師匠二人会。先に登場の三三師匠の演目は古典の「締め込み」。空き巣に入った泥棒が、急に家人が帰ってきたので、床下にかくれていると、自分のせいで夫婦ゲンカが始まる。思わず飛び出してなだめているうちに、最後には仲良く酒を酌み交わすというオチ。まだ若いのに、もはやベテランの貫禄を漂わす、背筋のスッと伸びた堂々たる話しっぷりに、思わずうならされました。
師匠連の合間には、太神楽(だいかぐら)曲芸の、鏡味仙志郎さんが登場。お馴染みの傘回しと立て物(バランス芸)。“まり”や“ます”が傘の上でくるくる回るは、口にくわえた“はつ”の上に何段も物を重ねるは、それ
をアゴに載せるは、とにかくいつ落ちるか崩れるかハラハラしどおしで、よい緊張と緩和を味わえました。
トリは花緑師匠。こちらは、ベテランに差しかかっているのに、甲高い声を上げながら、とにかく明るくて若手のように威勢がいい。演目は、これも古典の人気噺「火焔太鼓」。たよりない古道具屋の旦那が、しっかり者のおかみさんに尻を叩かれながら、仕入れた古太鼓をお殿様に売りに行って、大金を手に入れるという噺。話し手によって、いろいろな見せ方のある噺ですが、今回はとにかくおかみさんを中心に据えて、元気に、かつ迫力たっぷりに演じました。旦那の弱さを際立たせた上で、最後の逆転勝利を効果的に演出した感じです。本来は大ネタ。独演会で、たっぷり時間をかけたバージョンで聴きたいと思いました。
最後に、当日、印象に残った言葉。三三師匠は「今日は二づくしの日に、残念ながら三三です。でも、三三も見ようによっては二が3つですからね」。花緑師匠は「大いに笑ってください。笑うことが免疫力を高めますから」。一同納得。
ボランティアライター 三浦 俊哉