★イベントレポート「能狂言公演」2016年2月28日(日)開催
当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。
2月28日(日)逗子は、早朝から天気がいい。穏やかな春の海、ハーフマイルビーチの砂浜、遠くに江の島、白い衣を被った富士山。幽玄の世界、能狂言とはミスマッチな日だ。
午後14時すぎ、春霞で伊豆半島や富士山は、かすんで見えない。歩いて約10分ほどの逗子文化プラザホールへ向かう。
なぎさホールに入ると正面には能舞台があり、たくさんの観客がいるのに、静寂と幽玄の空間に入り込む。
今日の演目は、逗子文化プラザ開館10周年を祝うため、祝言性の高いものを番組立てにしたようだ。
最初の演目は、「高砂」。観世銕之丞が演じる住吉明神が颯爽と現れ神舞で、民の繁栄を願う。結婚式でおなじみの♪たかさごや このうらぶねに・・・・・・♪は、静の中にも迫力のある発声に心を揺さぶられる。
次に狂言「佐渡狐」は山本東次郎(人間国宝)が演じる。現代でいうコントだ。客席からは“静かで上質な笑い声”が聴こえた。
最後は、「羽衣」。世界文化遺産に登録された富士山と三保の松原を舞台に日本全国に伝わる羽衣伝説を能に仕上げたものだ。柴田稔が演じる幽玄な美しさの天女の舞いが幸せな気持ちにさせてくれる。
客席から舞台に通じる見えない花道があるようだ。無意識に私は花道を上り舞台に立ち、能と一体になっているような感覚が心地よい。
以前、友人の能楽師は「舞台の上で眠くなる、いや意識がない状態で演技している」と言っていた。これは、能が上手く舞えたときになるだそうだ。
今回の能狂言公演は、観客により楽しんでもらうため、2回の事前講座があった。
すこし敷居が高いと思われている能について、専門用語やストーリーなどを解説してくれた。
講師のひとりである柴田稔氏は講座の終わりに「能を考えることをあきらめて観てくれたら嬉しい」と語っていた。
すこしスピリチュアルな表現だが、今日は無意識の時間に溶け込む感覚。現代生活における貴重な贅沢を楽しめた。
もうすぐ3.11だ。2016年がテロや自然災害などのない平穏な年であることを。
公演の余韻が残るなか、海に向かい祈った。
情報発信ボランティア 海原 弘之
(投稿日:2016年03月24日)