★イベントレポート「なぎさジャズコレクション 渡辺香津美 ギター・ルネッサンスin逗子」2017年6月10日(土)開催
当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。
かっこいい!ステージに、スマート&ワイルドな感じのギタリスト渡辺香津美氏があらわれた。青春時代、女性に人気のある男性の条件の一つに‘ギターが弾ける’ということがあった。私もギターを練習したが、上手くできず、すぐに挫折したことを一瞬、頭をかすめた。コンサートは、当時レコードが擦り切れるほど聴いたビートルズナンバー(の中からアクロス・ザ・ユニバースやカム・トゥギャザー)を渡辺香津美氏がアレンジした曲から始まる。観客を知り尽くしているような心憎い選曲だ。曲の調べにより、ギターが渡辺香津美氏の体にあわせて角度をかえ、ステージライトを反射させてサウンドとともに客席に光の輝きが届く。ステージでは2人のギタリストが一緒に演奏を始めた。画家・原撫松の描いた絵「男二人」(男2人がピアノの連弾をしているという説のある絵)を、絵画鑑賞をしているときと同じような素敵な感覚(音色)だ。新しくステージにあらわれた男性は村治奏一氏。米国で本格デビューした次世代を担うギタリスト。休憩を挟んで、逗子出身の歌姫SHANTI 氏がアレンジされた曲を独特のトーンで高音域まできれいに歌いあげた。なかでも≪Fly Me To The Moon≫は、わたしたちを月に、いや香津美ワールドに連れて行って、と歌っているように聴こえた。コンサートも終わりに近づくと、胸が少しキュンとするサウンド、≪禁じられた遊び≫のアレンジ曲。たぶんギター青年たちの誰もが‘ポロンポロン’ と拙く弾き、多くの人がギター演奏に挫折した曲だ。一方、渡辺香津美氏は同曲をスピーディ に 力強く弾きながらも、芳醇なワインが甘く香るように聴かせてくれた。SHANTI 氏が再度あらわれ≪星に願いを≫を情感たっぷりに歌い、客席がひとつになったところで、最後の曲ビートルズナンバー≪Hey Jude≫では、観客を巻き込み、満席のなぎさホールが香津美&逗子ワールドになった。終演しても、興奮さめやらぬ人たちは、立ち上がり、逗子湾に打ち寄せる波のように拍手を贈っていた。
ボランティアライター 海原弘之
*********************************************************************
「逗子文化プラザホールは、時々ものすごい掘り出し物を催してくれるなあ」。わくわくしながら会場にむかう渡辺香津美のコンサート。渡辺香津美は、ジャズ界の沢田研二みたいな人で、色々なスタイルで現在も大活躍中だ。開演前はホワイエでワインを飲んで待っている年配の人が多かったけれど、いよいよ開演。香津美登場、スツールに腰掛け奏でる一曲目は、ビートルズの≪アクロスザユニバース≫。はじめて生で聴く香津美の音はひとことでいうと、「風景を連れてくる音」だった と 思う。個人的には、湿気の多い日本ではなくどこか乾いた異国の夕暮れを思い起こさせる音。2 曲目もビートルズ、そして1 人目のゲスト村治奏一登場。期待のクラシックギタリストだ。香津美とのデュエットもさることながらソロもしっかり聴かせてくれた。僕はひたすら音が紡ぐ空想の風景に思いをはせていたら、最後の曲≪リベルタンゴ≫がはじまり、香津美の超絶ソロで1 部終了。ああ凄かった。2部の最初はマイルスの≪マイルストーン≫でスタート。2 曲目は≪フライミートゥザムーン≫。2人目のゲストSHANTI登場だ。SHANTI のボーカルはとても清楚で透き通っているのに対し、香津美の音色は割と太い(と思う)。なのに、1 部の村治のゲストコーナー同様とてもバランスが取れていて、皆さすがだなと感心することしきり。次は今日のコンサートの山場のひとつ、≪ハードタイムズカムアゲインノーモア≫。しっとりとしたSHANTI のボーカルと香津美のギターがいい化学反応を起こした瞬間だった。そうこうしているうちにコンサートは終盤、香津美は演奏のアクセルをふかしはじめ最後はオリジナル曲≪ジャミングイベリコ≫で締めた。アンコールは、村治、SHANTI が再び登場。SHANTI は逗子出身なので、今回のコンサートはいわば凱旋。新しいスタートができて良かった。アンコール最後は、全員での≪ヘイジュード≫。声を出すのは恥ずかしかったけれど、香津美を堪能した2 時間だった。今回の香津美のコンサートに行って思ったのは、「質のいいものはこじんまりとしていても時間を満たしてくれる」ということ。ホールのフライヤーを見ると、ジャンルを問わず様々な公演が予定されている。ぜひ、1 度足を運んでみるのがいいと思う。
ボランティアライター 河島三二
**********************************************************************
1970 年代、渡辺香津美さんは確実にギター少年たちの“神様” だった(…的存在ではなく)。超絶技巧の指さばきに、驚愕、ひれ伏した記憶がある。当時、線の細いナイーブな印象だった青年が、50 年近くのキャリアを経て、風格と柔和さを加え、なぎさホールのステージに登場した。まずは、ザ・ビートルズの《アクロス・ザ・ユニバース》、《カムトゥギャザー》、《フール・オン・ザ・ヒル》を、アコースティックギターでつまびく。あの、先鋭的だった青年が、いきなりの郷愁である。なんとも優しくなめらかな音色と、囁くような弦のひずみに、おやじの目頭は早くも熱くなった。前半は若きクラシック・ギタリストの村治(弟!)奏一さんとの競演。オリジナルからボサノバ、タンゴまで、真っ直ぐで力強い村治さんに対し、貫禄と遊び心でサポートする渡辺さんとのシンクロは見事だった。選曲やスタイルから、まるで屋外にいるような錯覚を覚えた。確かに、午後の風が観客席を吹き抜けた。後半はジャズである。ステージは、一気にミッドナイトへ飛んだ。エレキを抱え、渡辺さんが始めたのは、あのマイルス・デイビスの名曲《マイルストーンズ》。超絶技巧が炸裂した。ドラムもベースも無いのに、リズムまで叩き出す早弾きの迫力に圧倒され、うならされた。そして逗子生まれの歌姫SHANTI さんが登場。《Fly Me To The Moon》や《やさしく歌って》などのスタンダードを澄んだ高音で歌い上げ、ジャジーな雰囲気を盛り上げる。一人になって、再びアコギに持ち替えた渡辺さんは、ブルースのうねり、フラメンコのかき鳴らしなど、様々なテクニックを披露して、最後まで私たちを魅了し続けた。アンコールまでの全15 曲で、渡辺さんは4 本のギターを使い分けた。プロのこだわりに感激である。最後に、当日は2 階席の最後列近くに座ったのだが、音が手でつかめるくらい近くに、そしてクリアに聴こえた。改めてこのホールの音響設備の良さに、地元民として誇らしさを感じた。
ボランティアライター 三浦俊哉
***********************************************************************
実はわたしは音楽にとても疎い。好きな楽曲はあるが、演奏家についてはほとんどわからない。そんな状態でもギタリストとして渡辺香津美さんの名前やお顔には見覚えがあった。会場に入ると、4,50 代の男性が多い印象。ギターだけなので簡素な構成で、渡辺香津美さんは時間になるとてくてくとごく自然にステージ中央の椅子に座り、あっさりと演奏を始める。長年関わってきたからこその独特の雰囲気を醸しているように思う。1曲目は≪アクロス・ザ・ユニバース≫。ビートルズのナンバー。さすが疎い私も聞き覚えのある曲が流れるとすぐにその音色に引き込まれた。その後も≪Come Together≫とビートルズの印象的なギターフレーズの曲が続く。実は後から渡辺さんのアルバム、ギター・ルネッサンスの収録曲が演奏されたのだとわかった。ホント無知で失礼きわまりない観客である。その後、ギタリストの村治奏一さんが登場。軽快な≪コダマスケッチ≫を演奏。その後お二人での演奏2 曲。合わさると全く別の深みが加わって凄い。休憩をはさみ、ボーカリストのSHANTI さんが登場。一気に華やぐ。有名曲だったので、純粋にその歌声と演奏を楽しむことができた。そのあとは知らない曲が続いたが、とても素敵だった。アンコールの最後はみんなで≪Hey Jude≫を歌い、会場中が一体となり、楽しいライブの印象が強く残った。余談ですが、SNS にライブに行ったことを投稿したら知り合いのミュージシャンが軒並みいいねをしてくれた。同業者から高く評価されている、真のミュージシャンズ・ミュージシャンなんですね。
ボランティアライター 蓬田ひろみ
(投稿日:2017年07月18日)