★イベントレポート「ムジチーレンin逗子スペシャルコンサート」2017年11月12日(日)開催
当ホールの情報発信ボランティアによるレポートです。イベントの雰囲気や感想を発信する活動をしています。
メンバーが高校生の頃から始まって、今年で30周年になるという前澤均氏率いるムジチーレン。各界で活躍する弦楽奏者総勢15名の室内楽団は、指揮者なしでぴたりと息を合わせ、重層的で見事な調和で、軽やかに、又時に海のごとく深い響きを紡ぎ出す。モーツァルトおなじみの≪アイネ・クライネ・ナハトムジーク≫で心地よくスタート。このままうっとりと贅沢な眠りを味わいたくなるような気分。
しかしながら本日の私のお目当ては声楽だった。徳永桃子氏、ご夫君の作曲家洋明氏のウィットに富んだトークも魅力のコンサートでは、いつも存分に楽しませてもらっている。
いよいよオペラのパートが開始。≪ドン・ジョバンニ≫から『カンツォネッタ』で登場した加耒徹氏、第一声から朗々と響くバリトンがホール全体と呼応しあう。音響板が喜んでいるかのような見事な美声。オペラらしく身振りもつけて、歌の内容を想像させてくれる。
続く二重唱で登場したのが淡い金色のドレスに身を包んだ徳永桃子氏。柔らかく、豊かな深みと広がりのある美声が観客を包む。ピアニシモから高音のフォルテまで、無駄な力が一切入っていないのびやかな発声が愉悦感をもたらす。
相性の良い声、というものがあるのだろう。重ね合わせた二色の色が互いをつぶすことなくきれいに混じり合い、その間に弦楽器の色がふわりとかけられて、重層的でありながら透き通った、得も言われぬハーモニーを醸し出す。淡い金色の、暖かな陽の光のような美しい音の世界に酔いしれる。続く≪コシ・ファン・トゥッテ≫の二重唱の素晴らしさには「ブラボー!」の一言しかなかった。徳永桃子という歌手の新たな魅力と出会い、又、加耒徹という有望なバリトン歌手が日本に登場していることを知った。
弦楽器と声楽がこんなに見事に調和することを初めて知った。ムジチーレンの音楽的なレベルの高さと、奏者自身が音楽を楽しんでいることがこれを可能にしているのだろう。
今日のコンサートでは、声楽目当ての人は弦楽の、又弦楽器目当ての人は声楽の魅力に新たに出会えたのではないかと思う。ウィーンフィルもオペラ座もいらない、逗子に暮らせてなんとラッキーなことか!
ボランティアライター 不破理江
(投稿日:2018年02月19日)